ソガイ

批評と創作を行う永久機関

死者とともに生きる—「100分de名著」大江健三郎『燃えあがる緑の木』を観ながら思ったこと

初めて、ちゃんと腰を据えて「100分de名著」を観ている。2019年9月は大江健三郎の『燃えあがる緑の木』を取りあげている。大江健三郎は、実のところすこし苦手で、『死者の奢り・飼育』といった短篇はまだしも、『万延元年のフットボール』や『懐かしい年へ…

読んで、書いて、やり直して—「夢見る少女の観客であること〜『アイドルマスターミリオンライブ!』考察〜」の、遅ればせながらの「あとがき」

www.sogai.net 君にとって一番おもしろい文章ってなに? このように問われて、私の頭にはこれまで読んできた数多の作品が駆け巡った。思わず腕組みをして、天を仰ぐ。そのとき、ひとつの答えが降りてきた。 「自分が書いた文章かも」 口にしてから、なんて身…

怒を捨てたい

経験上、「読めない期」と「書けない期」はかなり連動して起こるもので、それはやはり、読むことと書くことが不可分な行為であることの証明だと思う。 最近あまり文章を上げられていないことの言い訳なのかと言われると、まあ半分はそうなってしまうのだが、…

習作としての読書ノート『シュレーディンガーの猫を追って』第11回

www.sogai.net 第11回 先日、友人のお宅にお邪魔した。その友人は2匹の猫を飼っていて、そのうちの1匹が黒猫だった。 人懐っこいキジトラの子と比べるとなかなかこちらに顔を出してこない黒猫の子に近寄る。すると、すすっとからだをよじって、ベッドの…

書評 劉慈欣『三体』 人類を滅ぼすという思想

久しぶりに小説のスケールの大きさ、作者の構想力に驚かされた。『三体』は地球往事(あるいは三体)三部作の第一作目であり、このシリーズは現地中国ではベストセラーSFの一つだという。大まかな内容としては人類が地球外生命体である三体*1人と接触し、彼…

習作としての読書ノート『シュレーディンガーの猫を追って』第10回

www.sogai.net 第10回 先日、「すみだ北斎美術館」に行ってきた。行くのを決めたのは前日の夜だった。その理由というのもまあ不純なものである。 私は半年ほど前からたまにダーツをやっている。これまでは通販で買った初心者セットをなんとなく使っていた…

習作としての読書ノート『シュレーディンガーの猫を追って』第9回

www.sogai.net 第9回 芸能人やスポーツ選手の生い立ちを、再現ドラマを交えながら描く。そんなバラエティ番組を観たことがあるだろうか。複雑な家庭環境、苦しい生活、恩師との出会い、仲間との再会、そしてつかみ取る成功……。そのとき、司会や雛壇の芸能人…