『フラッガーの方程式』感想

文学-日本文学書評文学

浅倉秋成を、私はなんて評すればいいのだろう。『ノワール・レヴナント』で第十三回講談社BOX新人賞Powers を受賞してデビューした浅倉秋成は、同じく第十三回講談社BOX新人賞Powers の応募作を加筆修正した『フラッガーの方程式』、三年ぶりの新刊となった…

2017-12-05

掌編小説「彼女」

創作・エッセイ宵野雪夏

「彼女」恋人はいないし、作る気もない。周りにはそういっている。二次会の誘いを断った帰り道、駅から家の間に立つ五十五本の街灯、その五十本目は、この町に移ってから五年の間、ずっと不規則なリズムで白と橙の光の点滅を続けている。四十五本目を過ぎ…

2017-12-01

「宵野春琴伝」～『春琴抄』所感～

宵野雪夏文学-日本文学書評文学

その回数をしっかりと数えたことはないが、私がいままで一番多く再読した小説作品は、おそらく谷崎潤一郎の『春琴抄』である。私のことを知っているひとからはしばしば驚かれるのだが、私の谷崎との付き合いは、時間からすればわりと浅い。大学には入って初…

2017-11-29

迂回すること　分からないことを嗜好すること　教養とは何か

雲葉　零評論創作・エッセイ

本論では教養という言葉について論を進めていく。どうしてわざわざ教養などと言う古臭くて、衰退している概念について考えるのか。その点について訝しむ読者もいるかもしれない。確かに教養という言葉が古臭さを帯びているのは事実である。竹内(2013)は大学…

2017-11-26

その一冊から　～私の文フリの経験に寄せて～

創作・エッセイ宵野雪夏

何度か宣伝もしてきたとおり、先日、第二十五回文学フリマ東京に参加してきた。大学時代のサークルの仲間が集まって出した冊子は、なんと、刷った分が完売した。嬉しいことである。ソガイのフリーペーパーも、予想を遥かにこえて多くのひとに手に取ってもら…

2017-11-11

掌編小説　『遊具』　雲葉　零

雲葉　零創作・エッセイ

『遊具』蜂の巣状のように、あるいは安普請の集合住宅のように部屋がびっしりと詰まって区切られている。部屋の仕切りは合板で、殴れば壊れるようなちゃちなものである。周囲を見渡すと、左右それぞれに階段があり、上下に続いている。階段もやはり合板でで…

2017-11-09

文学フリマでフリーペーパーを配布します

11月23日（木祝）に開催される第二十五回文学フリマ東京で、ソガイのフリーペーパーを配布します。借り猫文学会という同人サークルの一角を間借りさせて頂く形で。だいたい字数は二万字ぐらいになりそうです。ブースはA-17に決定しました。フリーペーパーの…

2017-10-22

たまにはこんなコミックレビュー　HERO『雨水リンダ』

宵野雪夏アニメ・漫画書評

おそらく最近では、『ホリミヤ』の原作『堀さんと宮村くん』のひととして有名であるHEROだが、私とHEROの出会い、というか付き合いは、現在単行本として第９巻まで出ている『HERO個人作品集』が主である。このひとの作品、きみに合っていると思うよ、と友人…

2017-10-17

書評　ジョン・アーヴィング『ピギー・スニードを救う話』

雲葉　零書評文学文学-海外文学

異端者ジョン・アーヴィング著者ジョン・アーヴィングは現代アメリカ文学の旗手である。『熊を放つ』、『ガープの世界』、『サイダーハウス・ルール』など日本でも有名な作品が多数ある。ちなみに『熊を放つ』 (中公文庫) の翻訳者は村上春樹である。アー…

2017-10-10

「小説の筋」論争からみた、芥川と谷崎

宵野雪夏文学-日本文学評論文学

最近、『文芸的な、余りに文芸的な／饒舌録ほか』（講談社文芸文庫）という本が出た。言うまでもなく、芥川龍之介と谷崎潤一郎との間に起きた「小説の筋」論争に関連する文章を編纂した本である。私はそれなりの時間をかけて、この「小説の筋」論争について…

2017-10-04

書評　『内側から見たテレビやらせ・捏造・情報操作の構造』　水島宏明

雲葉　零書評社会・政治

内側からのテレビ批判この本は凡百のマスコミ批判本、マスコミを批判する言説と、少々趣が異なる。著者の水島がテレビの内側の人間、テレビマンを経験しているからである。水島の経歴は以下の様なものだ。 1957年北海道生まれ。東京大学法学部卒業。札幌テ…

2017-09-17

アメリカ禁書ランキングトップ10　2016年度版　後編

雲葉　零文学文学-海外文学評論

ランキング一位「This One Summer」を読んで一位の「This One Summer」をKindleで購入して読んだ。そもそも同作が禁書になった理由を振り返ろう。LGBTの人物が登場し、薬物が使用され、不敬*1で、「大人びたテーマと相まって性的に露骨」だと考えられたか…

2017-09-12

『デレマス』独断と偏見に基づいた映像論的なもの　後編

宵野雪夏評論アニメ・漫画

４光と影――期待と不安―― もっともこれは映像の世界においては常套手段といえるものであろうが、『デレマス』も数多の映像作品の例にもれず、光と影の対比がところどころで用いられている。場面として明るいシーンでは全体的に明るく、シリアスなシーンでは…

2017-09-12

『デレマス』独断と偏見に基づいた映像論的なもの　中編

宵野雪夏アニメ・漫画評論

２彼女たちが中央に立つとき注意してみれば意外なほど明確でありながら、しかし意識していないとそうそう気づけそうもないのであるが、第一話において、人物が画面の中央に立つ場面は、実はそれほど多くない。例外的に、シンデレラガールズのメンバーが『…

2017-09-12

『デレマス』独断と偏見に基づいた映像論的なもの　前編

宵野雪夏評論アニメ・漫画

『アイドルマスターシンデレラガールズ』いちファンによる独断と偏見に基づいた映像論的なものこれは、アニメーションはおろか、映画における表現方法の歴史もろくに学んでいない、正真正銘の門外漢による考察である。世の中にはいま、論じやすいアニメ…

2017-09-08

アメリカ禁書ランキングトップ10　2016年度版　前編

雲葉　零文学-海外文学文学評論

アメリカ図書館協会 (en:American Library Association, ALA)は「Top Ten Challenged Books」というランキングを発表している。意訳すればアメリカ禁書ランキングトップテンとも言うべきものだ。ただ、ここでchallengedという言葉は禁書運動のことを指してい…