ソガイ

批評と創作を行う永久機関

2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

朱を入れること

つい最近まで、掃除というものが苦手だった。足の踏み場がない、という母親の非難は自覚しながら、同時に、この混沌のなかにもたしかな秩序というものがある。積み重なった本の塔から一冊を取り出そうとすると、必ずとなりの塔を崩し、あらら、と慌てて押さ…

書評『鏡の中を数える』プラープダー・ユン 後編

『オタッキーな家族』 オタクという言葉よりもむしろ、それぞれが奇癖を抱えている家族といったほうが分かりやすいだろう。少なくとも、彼らはアニメ、漫画、アイドル、鉄道などのよくいるオタクではない。 そこで、家族構成と彼らの奇癖を紹介する。 カーン…

書評『鏡の中を数える』プラープダー・ユン 前編

雲葉 零 『鏡の中を数える』は一二の短編が収録されている、短編集である。この短編集に収められている『存在の有り得た可能性』は東南アジア文学賞を受賞している。また、訳者はタイ文学者で東京外国語大学名誉教授の宇戸清治である。 プラープダー・ユンは…

下流文学、あるいは読まれない小説達のために

下流文学とはなにか? この単語を知らないと言って恥じることはないし、検索する必要もない。何故ならば、私が創造した単語であるからだ。しかも、その概念を公開するのはこれが初めてなので、知っているはずがない。だから、まずは簡潔に下流文学の定義を述…

日本酒とノスタルジー

近頃、日本酒というものに興味を持ちはじめた。 これまでは、チェーン店の居酒屋で出てくるような、銘柄もわからない、安い日本酒しかほとんど飲んだこともなかった。それでも、私の舌にはそれなりに合っていたのだが、ある日の飲みの席で、地元が新潟である…

夢見る少女たちの観客であること~『アイドルマスター ミリオンライブ』考察~

二十代のうちは、夢を見てはいけないんです。そう言われたことがある。 ならば、それより小さいときに見ておくものなのか。いや、しょせん、子供の夢にすぎない、と言われるのがおちだろう。ならば、もっと大きくなってから? 年甲斐もなくそんな夢見て。そ…