ソガイ

批評と創作を行う永久機関

もはや私小説―秋山駿『人生の検証』

この本が、Kindleで432円で読めるということに、驚きをおぼえずにはいられなかった。良い時代になったものだ、とこんなところで感じることになるとは、思いもよらなかった。 秋山駿『人生の検証』(新潮社)は、ちょうど平成に元号が変わったあたりに発表さ…

「恋愛」は日本語?「モアベター」は英語?―柳父章『翻訳語成立事情』から

明治期の文章を読んでいると、いわゆる横文字の単語がそのままの音で使われていたり、漢字の熟語のルビとして振られていたりして、いまの時代の読者からすると、少し変な感じがすることがある。 有名な例だと、夏目漱石の小説にしばしば出てくる「停車場」と…

中村文則『掏摸』 運命へのささやかで確かな抵抗

中村文則の『掏摸』を近所の本屋で買って読んだ。 著者の名前やその著作『教団X』などは知っていた。しかし、彼の著書を読んだのはこれが初めてであった。なぜこの作品を最初に選んだのかと言えば、著者が友人相手にこの小説を書くために掏摸の練習をしたと…

地に足を付けるための勉強―荒木優太『これからのエリック・ホッファーのために』を読んで考えたこと

いまは、多くの大学生が卒業論文に苦しんでいる時期かと思われる。場所やゼミにもよるだろうが、まあ少なくとも二万字を越えるような文章を書く機会、というものは、そうあるものではない。 図書館に通い詰めて参考文献を読みあさったり、あるいは専攻分野に…

読書するからだで書くということ―堀江敏幸『傍らにいた人』

読書という行為は体験であり、すなわちそれは身体性が伴うものだと思っている。 それは紙の本でも電子書籍でもいいのだが、どちらにしても、読書のなかには頁をめくる手の動き、文字を追う目の動き、手に掛かってくる重みがあって、それは読書という行為から…

文章を読む・書くということについて、最近の私が考えていること

私が本格的に読書を生活のなかに入れるようになったのは、せいぜい五、六年ほど前のことでしかない。 まあ当たり前のことと思われるが、自分の好みを知るためには、自分が好まないものも知っていなければならない、と私は思っている。そして、ひとりの人間な…

両津勘吉は原爆を欲しがるか?

ジャンプが創刊50周年を記念して一部アニメを無料公開している。そこで偶然、この動画を目にした。 www.youtube.com こち亀、第204話 「視聴率を盗んだ男」である。 タイトルを見た瞬間に気づいた。これって『太陽を盗んだ男』が元ネタなんじゃないか? と。…