ソガイ

批評と創作を行う永久機関

創作・エッセイ

「ジャンル」を「パラダイム」にしないために

芥川賞・直木賞の季節が、またやってきた。 正直なことを言うと、芥川賞・直木賞の候補作が発表されても、受賞作決定までにそのほとんどの作品を読むことができていない。(今回は芥川賞候補については3作品読んだ。無難、と言われるかもしれないが一押しは…

『ソガイvol.2 物語と労働』紹介

表紙と裏表紙 表紙に書いてあるようにソガイ第二号のテーマは「物語と労働」です。 B5版で80ページ、定価は500円です。 目次と概要(クリックすると該当箇所の一部が読めます) 論考 次元を越えた「瓜二つ」―― 磯﨑憲一郎『赤の他人の瓜二つ』 宵野雪夏 2 …

掌編小説「彼女」

「彼女」 恋人はいないし、作る気もない。周りにはそういっている。 二次会の誘いを断った帰り道、駅から家の間に立つ五十五本の街灯、その五十本目は、この町に移ってから五年の間、ずっと不規則なリズムで白と橙の光の点滅を続けている。四十五本目を過ぎ…

迂回すること 分からないことを嗜好すること 教養とは何か

本論では教養という言葉について論を進めていく。どうしてわざわざ教養などと言う古臭くて、衰退している概念について考えるのか。その点について訝しむ読者もいるかもしれない。 確かに教養という言葉が古臭さを帯びているのは事実である。竹内(2013)は大学…

その一冊から ~私の文フリの経験に寄せて~

何度か宣伝もしてきたとおり、先日、第二十五回文学フリマ東京に参加してきた。大学時代のサークルの仲間が集まって出した冊子は、なんと、刷った分が完売した。嬉しいことである。ソガイのフリーペーパーも、予想を遥かにこえて多くのひとに手に取ってもら…

掌編小説 『遊具』 雲葉 零

『遊具』 蜂の巣状のように、あるいは安普請の集合住宅のように部屋がびっしりと詰まって区切られている。部屋の仕切りは合板で、殴れば壊れるようなちゃちなものである。周囲を見渡すと、左右それぞれに階段があり、上下に続いている。階段もやはり合板でで…

朱を入れること

つい最近まで、掃除というものが苦手だった。足の踏み場がない、という母親の非難は自覚しながら、同時に、この混沌のなかにもたしかな秩序というものがある。積み重なった本の塔から一冊を取り出そうとすると、必ずとなりの塔を崩し、あらら、と慌てて押さ…

日本酒とノスタルジー

近頃、日本酒というものに興味を持ちはじめた。 これまでは、チェーン店の居酒屋で出てくるような、銘柄もわからない、安い日本酒しかほとんど飲んだこともなかった。それでも、私の舌にはそれなりに合っていたのだが、ある日の飲みの席で、地元が新潟である…