出版
2025年11月 今月のハイライトは、23日の文学フリマ東京周りだ。 動きがかなり鈍くなっていた同人活動について久方ぶりに「まあまあ」とは言えるくらいの感触を得られたことにはじまり、大学時代の友人に誘われて参加した同人の創刊号が好調、そして8年目にし…
2025年9月 先月、「本当は明るい話がしたい」と嘆いたばかりだが、世情から目を背けない限り、もはやこれは叶わぬ願いなのだろう。このような状況の中で(狭義の)政治的な主張を続ける人々の胆力は大したものだと感嘆する一方で、そこにどうしようもない不…
第173回芥川賞・直木賞は両賞とも「該当作なし」となった。これは1998年1月の第118回以来、6度目のことだという。この6という数字をどう見るかだが、個人的には、思いの外多いな、という印象だ。その第118回の候補作の作者に、今回の選考委員が3人もいるのも…
2025年5月 久米田康治『かくしごと』(講談社)の主人公は週刊誌で連載をもつ漫画家だが、年末年始の休みになると決まって体調を崩すという。それまで気を張り続けていた反動で、無理やり押し込めていた心身の疲労が一気に押し寄せるが故の現象だ、そんな風…
2025年4月 人類の歴史に精通しているわけではないのでそれを専門とする人間からすれば浅い認識と言われるかもしれないが、実感として、現代ほど人間が自分のことを語り、それを公に広く発表することが日常になった時代はないであろう。 自分、そしてその生活…
2025年3月 本を読むとは、かくも大変なことかと改めて思い知る。 いくつかやらねばならぬことが重なるともう本を手に取る気力は起きないし、なにもなかったらないで、もう少し軽く時間を潰せるものに手が伸びる。 読書をしない人々を見て嘆く読書家が見落と…
2025年2月 芥川賞に関心を持たなくなって久しいが、相も変わらずSNSではこの時期になると、文学周りので「論争」が巻き起こっているようだ。 今回の受賞者のひとりである安堂ホセは、過去に『IRREVERSIBLE DAMAGE』(KADOKAWAが邦訳の刊行を予定していたがト…
2025年1月 年末にインフルエンザを発症し、数日間、床に臥しているといつの間にか年が明けていた。 当たり前のことであるが、元気がない時に本を読むのは難しい。辛いときには最低限のことしかできない。これは即ち、本というものは読まなくても死にはしない…
昨今、主に著名人に対するSNS等インターネット上での誹謗中傷が社会問題として盛んに議論されている。これが由々しき問題であることにはまったくの同意であるが、その一方、しかし——いや、それゆえにというべきかもしれないが——私が最近強く感じるのは、どこ…
『アイデア』402号(誠文堂新光社)の特集「小さな本づくりがひらく 独立系出版社の営みと日本の出版流通の未来」を読んだ。 7つの出版社へのインタビューと4つの論考、そして7人の選者によるブックリストと、かなりのボリュームがある。本旨についていろい…
日本の出版において豪華本・限定本といえば、長谷川巳之吉の第一書房を初めとして、野田誠三の野田書房、江川正之の江川書房、斎藤昌三の書物展望社など、主には戦前昭和期に隆盛を極めた出版社とその社主の名前が思い浮かぶ。 だが、1969年に設立してから、…
本以外のものも売る「複合型書店」が増え始めたのは、2000年代中盤から2010年代初頭あたりのことだろうか。代官山蔦屋書店がオープンしたのが2011年末とのことで、その辺りからこの複合化の勢いが加速していったようだ。1994年生まれの私が意識的に本を読み…
1月9日 鴻上尚史が書いたという新成人への言葉にあつまる称賛には、いささか気味の悪さを覚えた*1。もちろん感性は人それぞれではあるが、だとしてもここまで称賛される意味は分からない。理由は単純で、別に大した文章ではないからだ。「自分の頭で考えよう…
『イブニング』休刊のニュースには驚いた。たしかに『モーニング』や『アフタヌーン』と比べると最近はあまりヒット作に恵まれていない印象はあるが、それほど漫画好きでもない私ですらよく知っている名前だし、それに版元はあの講談社だ。しかし、それくら…
12月5日 出版のことを少し追わなくなってある程度の時間が経った。 それでもちょこちょこと嫌な話は耳に入ってくるが、良い話については皆無に近い。実際には良い話題もあるにはあるのだろうが、数やインパクトにおいては、やはり悪い話の方に分があるという…
書店において、文庫本の棚づくりには大きく分けて2種類の方法が考えられる。 一つが、出版社、レーベルごとに分けた上で作者の五十音順や、各レーベルの番号で並べる方法。 もう一つが、出版社の別なく、作者の五十音順で並べる方法。 多くの書店、とりわけ…
「publish」には「出版する」という意味の他に、「公開する」「発表する」という意味がある。 出版というと紙、電子問わず本という形で発表することを指す印象だが、後者を含めれば、たとえばこのようにブログを公開することやSNSの投稿も、広い意味では「pu…
2022年2月1日に開館予定の中野区立中野東図書館の「巨大本棚」が問題になったことが記憶に新しい。吹き抜けに3階分もの高さがある本棚の写真は、それだけの反応を呼ぶには充分すぎた。その殆どが否定的な反応だったようだ。 もっとも、一言に「否定的」とい…