ソガイ

批評と創作を行う永久機関

紙の本の余白

ただいま、絶賛編集作業中である。ソガイで冊子を作るのはこれで4回目。思い返すと、一号はふつうに両面に文章を印刷したものをホチキスで綴じた、モノクロのフリーペーパー、二号は、本文から表紙まで、すべてWordを使って無理やりなんとかした、手探り感…

島村利正を読んでみて

(…)昨日の晩は娘の友だちに頼まれて音楽と社会科の教科書にパラフィン紙をかけてたんですよと相好を崩す筧さんがいま私のためにあたらしくカバーをかけているのは、一九五七年に三笠書房から出た島村利正の短篇集『殘菊抄』だった。(…)函入りの『奈良登…

案外、感情って適当?

いまから三〇年以上も前、私もうつ病的な症状におちいった経験がある。(…)胃の具合も悪くなり、病院で診察してもらったところ、神経性胃炎とのことで胃薬と精神安定剤を処方された。すると一週間もしないうちに、それまでのうつ状態がウソのように拭い去ら…

ただの私的な宣言です。

忙しさを言い訳に、どうにも弛んでいる気がする。わざわざ宣言するようなことではないので滅多に言わないが、現在、私は大学院生だ。この4月から修士2年となり、予定では後期博士課程にダイレクトで進むつもりはないので、単位を落とさない限りは今年度で…

迷いながら書く―小川国夫を読みながら感じたこと

先年、日本近代文学館に初めて行ってきた。「没後十年 小川国夫展―はじめに言葉/光ありき―」を観に行くためだ。私は最近、小川国夫という作家に興味を持ち始めた。そんな折にTwitterをのぞいていたら、まさに渡りに船、こんな展示が催されていることを知っ…

ただ「一つ」を求めて~森内俊雄『道の向こうの道』からの道~

小さいころ、私はけっしてからだが強い方ではなかったらしい。お風呂に入ると肌はすぐに真っ赤になるし、しょっちゅうお腹の調子を崩しては寝込む。定期的に鼻血は出すし、水疱瘡にもおたふく風邪にもしっかりかかった。 中学生、高校生となるにつれて、だん…

選択と自由について考えたこと SchoolDaysを手掛かりに

「嫌ならやめればいいじゃないか」 というような言葉を発した、あるいは聞いた経験がある方は多いのではないか。例えば、酒場でサラリーマンが会社の愚痴を知人に言ったときに。あるいは、喫茶店で友人から恋人の愚痴を聞かされた時に。確かに、ある会社に勤…

もはや私小説―秋山駿『人生の検証』

この本が、Kindleで432円で読めるということに、驚きをおぼえずにはいられなかった。良い時代になったものだ、とこんなところで感じることになるとは、思いもよらなかった。 秋山駿『人生の検証』(新潮社)は、ちょうど平成に元号が変わったあたりに発表さ…

「恋愛」は日本語?「モアベター」は英語?―柳父章『翻訳語成立事情』から

明治期の文章を読んでいると、いわゆる横文字の単語がそのままの音で使われていたり、漢字の熟語のルビとして振られていたりして、いまの時代の読者からすると、少し変な感じがすることがある。 有名な例だと、夏目漱石の小説にしばしば出てくる「停車場」と…

中村文則『掏摸』 運命へのささやかで確かな抵抗

中村文則の『掏摸』を近所の本屋で買って読んだ。 著者の名前やその著作『教団X』などは知っていた。しかし、彼の著書を読んだのはこれが初めてであった。なぜこの作品を最初に選んだのかと言えば、著者が友人相手にこの小説を書くために掏摸の練習をしたと…

地に足を付けるための勉強―荒木優太『これからのエリック・ホッファーのために』を読んで考えたこと

いまは、多くの大学生が卒業論文に苦しんでいる時期かと思われる。場所やゼミにもよるだろうが、まあ少なくとも二万字を越えるような文章を書く機会、というものは、そうあるものではない。 図書館に通い詰めて参考文献を読みあさったり、あるいは専攻分野に…

読書するからだで書くということ―堀江敏幸『傍らにいた人』

読書という行為は体験であり、すなわちそれは身体性が伴うものだと思っている。 それは紙の本でも電子書籍でもいいのだが、どちらにしても、読書のなかには頁をめくる手の動き、文字を追う目の動き、手に掛かってくる重みがあって、それは読書という行為から…

文章を読む・書くということについて、最近の私が考えていること

私が本格的に読書を生活のなかに入れるようになったのは、せいぜい五、六年ほど前のことでしかない。 まあ当たり前のことと思われるが、自分の好みを知るためには、自分が好まないものも知っていなければならない、と私は思っている。そして、ひとりの人間な…

両津勘吉は原爆を欲しがるか?

ジャンプが創刊50周年を記念して一部アニメを無料公開している。そこで偶然、この動画を目にした。 www.youtube.com こち亀、第204話 「視聴率を盗んだ男」である。 タイトルを見た瞬間に気づいた。これって『太陽を盗んだ男』が元ネタなんじゃないか? と。…

第27回文学フリマ東京 で『ソガイ vol.3 戦争と虚構』を販売します。※試し読み有り

前回に引き続き、文フリ東京に出店します。 c.bunfree.net ブース番号はキ-12、隣接ブースは早稲田大学現代文学会さんとArts&Books コレコネ&ABYBさんになります。開始時間の十一時から終了の一七時までブースを開いている予定なのでお好きな時にお越しくだ…

『あいくるしい』歌詞考察、もしくは鑑賞?~言の葉をかき分けた先には~

私はこれまで、歌詞の考察といったものをしたことがほとんどない。いまだ詩をちゃんと読めない人間、ということもあり、歌詞考察というものはどうにも私の領分にはないのではないか、と逃げてきたところもある。 ではなぜ、いまから『あいくるしい』という、…

作品によって変わる作者の顔、それでも変わらない場所~私にとっての柴崎友香の場合~

正直なところ、柴崎友香の作品に苦手意識を持っていた時期があった。それは、芥川賞受賞作『春の庭』(文春文庫)をすぐさま購入し、読んだときにも拭えなかった。(思えば、なぜなかば読まず嫌いになっていた作家の作品を迷わず購入したのか、いまになって…

訊いてみた! 大学で学ぶ文学とは?

語り手 宵野夏雪 大学で文学を専攻。正確に言うと学部名称は文学部ではない。聞き手、全体構成 雲葉零 大学での専攻は経済学。 小説家になりたい。そう思った人は大学で文学を学ぶべきなのでしょうか。 以下、文学を専攻した宵野へのインタビュー形式でその…

『ルポ ニッポン絶望工場』に見る官僚組織としての朝日新聞

いつごろからなのかははっきりと覚えていないが、都心ではコンビニや飲食チェーンで外国人店員を多く見かけるようになってきた。日本人よりも外国人のほうが多いのではないかとすら感じる。そこまでではないにせよ、都会とは程遠い私の田舎でも外国人店員を…

「危うさ」と「きわどさ」の魅力としての、堀江敏幸『砂売りが通る』

読書の醍醐味のひとつに「再読」があることは、論をまたない。とはいえ、折に触れて何度も何度も紐解きたくなるような作品なんてものは、そうそう出会えるものではない。一般的に評価が高くても、それは、その作品が自分にとって何度も読みたくなるものにな…

野坂昭如『戦争童話集』をきっかけに考えてみる、「当事者意識」というもの

インターネットやSNS等で、だれでもどこでも、世界中の情報を得ることができるような社会になったが故に、かえって、「当事者性」といったものが持つ力が、もはや特権的とでも言えるくらいに大きくなっているように感じられる。 文芸の世界でも、これはホ…

情報化社会の極限の可能性としての、野﨑まど『know』

野﨑まど作『know』(2013年 早川書房)は、人造の脳葉<電子葉>を人間の脳に移植することが義務化された、2081年の京都が舞台の作品である。 常に周囲の情報をモニタリングしている「情報素子」を散布された≪情報材≫がいたるところに設置されており、人間…

世界から見捨てられた人々、世界を見捨てる人々 『ファイト・クラブ』から見るテロリズム

テロリズム、あるいは個人かせいぜい数人の集団による無差別殺人は現代を特徴づける一つのキーワードかもしれない。これらの事象は国内に限らなければ、それこそ毎日のように発生し続けている。それらの原因は政治、経済、宗教、民族など様々な要素に分解さ…

人生の童話~『雪のひとひら』書評~

新装版が1冊と文庫が2冊、となぜか3冊持っている小説がある。(2冊目の文庫はちょっとした行き違いによるものだが。)ポール・ギャリコ『雪のひとひら』(矢川澄子訳)である。 題名通り、「雪のひとひら」と作品内で呼ばれる一片の雪の結晶を主人公とし…

遅読のすすめ~宮沢章夫『時間のかかる読書』を参考に~

どこを歩いていても書店を見つけては吸い込まれ、一時期は書店に勤めていた人間として感じるのは、相変わらず「速読」本は、ひとつのコーナーを作れるほどには店頭に並んでいる、ということだ。 なにを隠そう、私自身、高校生の頃だったと思うが、何冊かの速…

「ジャンル」を「パラダイム」にしないために

芥川賞・直木賞の季節が、またやってきた。 正直なことを言うと、芥川賞・直木賞の候補作が発表されても、受賞作決定までにそのほとんどの作品を読むことができていない。(今回は芥川賞候補については3作品読んだ。無難、と言われるかもしれないが一押しは…

第26回文フリ東京及び『サブカルチャーと生存 第一次生存報告書』収録「滝本竜彦 『NHKにようこそ!』 読書会」についての感想

2018年5月6日に開催された第26回文フリ東京にソガイとして参加した。前回の文フリではフリーペーパーしか配布しなかったが、今回は定価500円で『ソガイvol.2 物語と労働』を販売した。今更だが、わざわざソガイのブースを訪れてくれた皆様に感謝。 50部刷っ…

文学は役に立つ 石原千秋『近代という教養 文学が背負った課題』書評

いちおう私はこういったブログを運営しているわけだが、正直な話、文学研究や批評の類の文章を読んでいても、よくわからないことが多い。それは、自分の頭が追いついていないせいだ、と思って後ろめたさのようなものを感じていた。いや、その意識自体はいま…

饒舌な感想『BAMBOO BLADE』

最近少し更新が滞っていましたので、リハビリではないけれども、軽めの感想記事を書いていきたいと思います。 『BAMBOO BLADE』(以下『バンブレ』)はやや古いかもしれないが、アニメ化もしたことがありますし、けっこう有名な作品なのではないでしょうか。…

投げ銭のお願いとソガイ電子版販売

投げ銭 ソガイの活動に協力して頂ける方は、是非アマゾンギフト券を以下のアマゾンのサイトから送信ください。 宛先は以下のとおりです。 sogaidenshi@gmail.com 冊子発行の赤字穴埋め等に使われます。金額は15円から可能です。また希望する筆者名をメッセー…