ソガイ

批評と創作を行う永久機関

2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

「恋愛」は日本語?「モアベター」は英語?―柳父章『翻訳語成立事情』から

明治期の文章を読んでいると、いわゆる横文字の単語がそのままの音で使われていたり、漢字の熟語のルビとして振られていたりして、いまの時代の読者からすると、少し変な感じがすることがある。 有名な例だと、夏目漱石の小説にしばしば出てくる「停車場」と…

中村文則『掏摸』 運命へのささやかで確かな抵抗

中村文則の『掏摸』を近所の本屋で買って読んだ。 著者の名前やその著作『教団X』などは知っていた。しかし、彼の著書を読んだのはこれが初めてであった。なぜこの作品を最初に選んだのかと言えば、著者が友人相手にこの小説を書くために掏摸の練習をしたと…

地に足を付けるための勉強―荒木優太『これからのエリック・ホッファーのために』を読んで考えたこと

いまは、多くの大学生が卒業論文に苦しんでいる時期かと思われる。場所やゼミにもよるだろうが、まあ少なくとも二万字を越えるような文章を書く機会、というものは、そうあるものではない。 図書館に通い詰めて参考文献を読みあさったり、あるいは専攻分野に…