ソガイ

批評と創作を行う永久機関

習作としての読書ノート『シュレーディンガーの猫を追って』第4回

www.sogai.net 第4回 本題に入るまえに、ちょっとした余談。 昨日、仕事のあと書店に寄って店内を歩き回っていた。ひとつ、綿野恵太『「差別はいけない」とみんないうけれど。』(平凡社)が気になっていて、これは確実に欲しかった。売れ行きが好調だと聞…

習作としての読書ノート『シュレーディンガーの猫を追って』第3回

www.sogai.net 第3回 第二章「すべての猫が灰色に見えるとき」。 日が沈み、雲が月と星々を隠していた。雲は空を覆い尽くし、残された光を奪ってしまう。庭の片隅に、それは姿を現した。リラのすぐそば、ほとんど乾き切った大きな金雀児の近くだ。それは壁…

習作としての読書ノート 『シュレーディンガーの猫を追って』第2回

www.sogai.net 第2回 第一部に入っていく。第一章「むかしむかし、二度あったこと」。 むかしむかし。子どものころを思い出す。おとぎ話のはじまりはいつもこれだった。まさか、この小説は童話になっていくのだろうか。とにかく読み進めよう。 シュレーディ…

習作としての読書ノート 『シュレーディンガーの猫を追って』第1回

最近、やってみたいこととやらねばならないことが重なり、ちょっとどっちつかずになっているような気がする。だから、腰を据えてなにかひとつのことを続けてみようと思った。そこで、ひとつの作品を少しずつ読んでいき、思ったことや気づいたこと、連想した…

きっとだれかには届くと思っているから僕は書いている。

小説家になりたい。そう思い立ったのは、ライトノベルばかりを貪るように読んでいた高校2年生くらいの頃だった。おもしろい物語に触れていると、やっぱり、自分でも書いてみたいと思ってしまうものだ。 しかし、自分には圧倒的に読書量が不足していた。楽し…

中村光夫の可能性—『虚実』あとがきから

中村光夫といえば、『風俗小説論』における私小説批判が有名だろう。もちろん、彼の仕事はこれだけではないのだが、とはいえ、もはや『風俗小説論』こそが彼の代名詞のようになってしまっている。そんな風潮を責めているわけではない。事実、私にとってもだ…

積んである本について話してみる

日々本を積んでいて、一冊読み終わるまでに三冊は手持ちの本が増えているような有様、積み本がなくなることは一生ないのではないか、と思わないでもない私であるが、ここで一度、自分がどのような本を積んでいるのか、確認してみるのもいいだろう。 ところで…