ソガイ

批評と創作を行う永久機関

筆まかせ 1

2/27 なにか新しいことを始めたい、と書いた。そこには具体的に書かなかったけれども、その候補のひとつとして、古井由吉の作品をこつこつ読み進めてみる、というのがあった。古井の作品は『杳子・妻隠』『雪の下の蟹・男たちの円居』くらいしか読めておらず…

まかせた筆が描くもの

思えばここ一年、「本」や「出版」ということについて、折に触れて考え続けていたような気がする。 そのきっかけは、みすず書房創業者・小尾俊人の著作『出版と社会』(幻戯書房)を読んだことである。本書の大部分は引用が占めており、果たして純粋な「小尾…

日を待つ——森内俊雄『一日の光 あるいは小石の影』

東京堂書店の新刊棚、しかも平積みされているこの本に自分の目を疑った。森内俊雄『一日の光 あるいは小石の影』(アーツアンドクラフツ、2019年12月)。森内俊雄、三十余年にわたるエッセイ集成だ。 ここ1年、森内俊雄の近著『道の向こうの道』に感銘を受け…

これからの余生に向けて

先日、無事に修士論文を提出し、口述試験も終えておそらく修士課程を3月で修了することになる。 この2年、本当にあっという間だった。学部時代の4年間も短く感じたが、それと比べてもずっと時間の進みが早かった。来年度の新入生ガイダンスの話を教授がし…

2019年を振り返る

二十歳を過ぎると一年がどんどん短くなっていく、とよく言われるが、まったくもってその通りだなあ、としみじみ嚙み締める今日この頃。論文だったり進路だったりと、いろいろなことでばたばたしていたせいでもあるのだろうけど、この一年は本当にあっという…

「日常」の記憶に生き続ける—金子直史『生きることばへ—余命宣告されたら何を読みますか?』

「余命宣告されたら何を読みますか?」 この副題に、私の目は止まった。もともとべつの本を買うつもりで書店に来ていたのだが、目当ての本の近くにささっていた金子直史『生きることばへ』(言視舎)を手に取って開く。「まえがき」の冒頭に、私は引き込まれ…

「第29回文学フリマ東京」感想

ソガイは、スペースを間借りして配布したフリーペーパーで1回、個人での出店が3回と、計4回の文学フリマ東京に参加している。文学フリマ東京は半年に一度開催されているから、毎回参加するとなると、結構大変なのだ。打ち上げの飲みの席で半年後の計画を…